
「65万円控除を適用できたはずなのに、修正できない?」そんな悩みをお持ちではありませんか?
青色申告特別控除は、事業的規模かどうかで控除額が変わります。申告時のミスが後で大きな影響を与えることもあります。
じつは、65万円控除は後から修正できません!申告時に適用しなかった場合、過去に遡っての修正は不可。
一方、10万円控除なら「更正の請求」で過去5年分の修正が可能です。
なぜなら、税法上のルールが違うからです。
65万円控除は確定申告書に記載しないと適用できませんが、10万円控除は後から適用できる仕組みになっています。
この記事では、65万円控除と10万円控除の違い、修正の可否、修正する方法などを解説します。
最後まで読めば、65万円控除を確実に適用するポイントや、10万円控除を後から修正する方法がわかります。ぜひ参考にしてください!
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執筆者:古林国博
古林 不動産鑑定士・税理士・公認会計士事務所 代表
不動産オーナー様が抱える「節税・相続・不動産経営」などのお悩みをまるごと解決へと導くお手伝いを行っています。
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目次
1. 青色申告特別控除の適用ミスを修正できるか?
確定申告時に青色申告特別控除(65万円・10万円)を適用し忘れたり、誤って適用額を低く申告してしまった場合、修正して税金を取り戻すことは可能でしょうか?
本章では、
「特別控除の適用なし・10万円控除から65万円控除への修正」
「特別控除の適用なしから10万円控除への修正」
の2つのケースについて解説します。
まず、税金を取り戻す手続きとして 「更正の請求」 があります。
これは、「本来より多く税金を支払ってしまった場合」に、納税者が税務署に還付を求める手続き です。
ただし、更正の請求が認められるためには、税法上の要件を満たしている必要があるため、すべてのケースで修正が可能なわけではありません。
次に、それぞれのケースごとに詳しく見ていきましょう。
1-1. 「特別控除の適用なし」「10万円控除」から「65万円控除」への修正
✅ 控除なし・10万円控除で確定申告した後に、65万円控除へ修正できるか?
結論として、特別控除の適用なしから65万円控除へ変更、10万円控除を65万円控除に変更する「更正の請求」はできません。
💡 なぜ65万円控除に変更できないのか?
青色申告特別控除(65万円)を適用するには、次の要件を満たす必要があります(租税特別措置法第25条の2第5項)。
- 確定申告書に65万円控除を適用する旨、および計算事項を記載すること
- 正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に基づいた貸借対照表・損益計算書を確定申告書に添付すること
- 確定申告期限内(3月15日)に申告書を提出すること
- 電子帳簿保存またはe-Taxによる申告を行うこと
65万円控除を受けるためには、最初の申告書の段階で「65万円控除」の記載がなければならない というのがポイントです。
つまり、一度10万円控除で申告してしまうと、確定申告書に「65万円控除」と明記されていないため、後から修正することはできません。
💡 実際によくあるケース
- 事業的規模(5棟10室)を満たしていたが、誤って10万円控除で申告してしまった。
- 5棟10室を絶対基準と誤解しており、事業的規模の判定を誤って10万円控除で申告しまった。
- 新しく物件を購入し、事業的規模に達したことに後から気づいた。
- 共有名義や空室などの判定上の扱いを誤り、事業的規模と認識せずに10万円控除を適用してしまった。
- 事業所得と事業的規模でない不動産所得がある場合の特別控除の扱いを誤り、10万円控除を適用してしまった。
✅ ポイント
一度10万円控除を選択してしまうと、後から65万円控除への修正はできないため、申告時点で慎重に判断することが重要です。
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1-2. 「特別控除の適用なし」から「10万円」控除への修正
✅ 申告時に青色申告特別控除を適用しなかった場合、後から10万円控除を適用できるか?
結論として、「更正の請求」をすれば10万円控除を適用できる可能性があります。
💡 なぜ10万円控除は後から適用できるのか?
青色申告特別控除(10万円)は、確定申告書への記載を要件としないためです。
つまり、青色申告の要件を満たす帳簿が適切に作成・保存されていれば、更正の請求を行い、後から控除を適用することが可能となります。
💡 実際によくあるケース
- 青色申告の届出をしていたが、確定申告書に特別控除の適用を記載せずに申告してしまった。
- 申告ソフトや税理士のミスにより、青色申告特別控除が適用されていなかった。
- 申告時に青色申告の制度を理解しておらず、適用しなかった。
✅ ポイント
帳簿が適切に保存されていることが前提となるので、証拠資料を用意しておくことが重要。
10万円控除は「更正の請求」で後から適用可能!
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💡 まとめ
- 特別控除なし・10万円控除 → 65万円控除へ変更は不可!(最初の申告時に65万円控除を記載する必要がある)
- 特別控除なし → 10万円控除へは変更可能!(帳簿要件を満たせば更正の請求ができる)
青色申告特別控除の適用を間違えると、税額が大きく変わる可能性があるため、適用条件について慎重に判断することが重要 です。
もし申告ミスに気づいた場合は、更正の請求が可能かどうかを確認し、早めに対処しましょう。
📌 次章では、「青色申告特別控除の基礎知識」を解説し、65万円控除・10万円控除の適用条件を詳しく見ていきます。
2. 青色申告特別控除の基礎知識:65万円・10万円控除の違いと適用条件
青色申告特別控除には「65万円控除」と「10万円控除」の2種類があり、適用要件が異なります。
申告時に誤った控除額を適用してしまうと、後から変更できる場合とできない場合があるため、適用条件をしっかり理解しておくことが重要です。
本章では、それぞれの控除の要件や違いについて詳しく解説します。
2-1. そもそも青色申告特別控除とは?
青色申告特別控除は、青色申告を行う個人事業主や不動産オーナーが受けられる税制上の特典のひとつです。
確定申告の際に一定の要件を満たせば、所得から控除が受けられる制度 で、節税効果が大きいのが特徴です。
この控除を適用することで、課税所得が減るため、納める税金を軽減 できます。
ただし、適用するためには一定の条件があり、それを満たしていない場合は控除を受けることができません。
2-2. 65万円控除の適用要件
65万円控除を適用するためには、以下のすべての要件を満たす必要があります(租税特別措置法第25条の2第5項)。
要件 | 具体的な条件 |
① 事業的規模の要件 | 不動産賃貸業が事業的規模であること |
② 帳簿の要件 | 正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に基づいて記帳していること |
③ 申告書の要件 | 貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付し、控除を適用する金額を記載して申告すること |
④ 申告期限の要件 | その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに申告書を提出すること |
⑤ 電子申告の要件 | 次のいずれかに該当すること ① 電子帳簿保存を行う ② e-Taxで確定申告を行う |
✅ ポイント
- 確定申告書に「65万円控除を適用する」旨を記載することが必須。
→ 記載がないと、後から65万円控除に修正することはできない! - 複式簿記で帳簿をつけることが条件。
- 電子申告(e-Tax)または電子帳簿保存をしていない場合、55万円控除となる。
- 5棟10室基準を満たしていることが必須(不動産所得の場合)。
2-3. 10万円控除の適用要件
10万円控除は、65万円控除と比べて要件が緩く、次の条件を満たせば適用できます。
要件 | 具体的な条件 |
① 事業的規模の要件 | 事業的規模でなくても適用可能(1室の賃貸でもOK) |
② 帳簿の要件 | 簡易的な帳簿(単式簿記)を作成・保存していること |
③ 申告書の要件 | 特に申告書に控除額の記載は不要 |
④ 申告期限の要件 | その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに申告すること |
✅ ポイント
- 事業的規模の要件はなく、1部屋の賃貸でも適用可能。
- 単式簿記(簡易簿記)でもOK。
- 確定申告書に控除額の記載がなくても、後から適用可能!
→ 「申告時に10万円控除を適用し忘れた場合」でも、更正の請求で修正可能!
2-4. 65万円控除と10万円控除の違いを一覧表で解説
✅ 65万円控除と10万円控除の違いを、表で整理すると以下のようになります。
項目 | 65万円控除 | 10万円控除 |
事業的規模の要件 | 必要(概ね5棟10室基準など) | 不要(1室でもOK) |
帳簿の形式 | 複式簿記 | 単式簿記 |
貸借対照表の添付 | 必要 | 不要 |
電子申告(e-Tax)要件 | 必要(e-Taxまたは電子帳簿保存) | 不要 |
確定申告書への記載 | 必要(65万円控除を明記すること) | 不要 |
更正の請求が可能か? | 不可(申告時に記載がなければ適用できない) | 可能(後から適用できる) |
✅ 65万円控除を受けるには、確定申告時に明記しなければならない!
→ 確定申告時に10万円控除を選択してしまうと、後から65万円控除には修正できないので要注意!
✅ 10万円控除は、申告書に記載しなくても適用可能!
→ 申告時に控除を適用し忘れても、更正の請求で後から修正して適用できる!
💡 まとめ
- 青色申告特別控除には 「65万円控除」 と 「10万円控除」 の2種類がある。
- 65万円控除は、事業的規模・複式簿記・電子申告の要件を満たさないと適用できない。
- 65万円控除は、申告書に記載がないと後から適用できない!(更正の請求は不可)
- 10万円控除は、後から適用することが可能!(更正の請求で修正できる)
- 確定申告時に65万円控除を適用できるか慎重に判断することが重要!
📌 次章では、「更正の請求」について解説します。
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3. 「更正の請求」と「修正申告」の違いを解説
青色申告特別控除10万円を適用しなかった場合、払い過ぎた税金を取り戻すためには「更正の請求」を行う必要があります。
また、65万円控除は過去に遡って修正はできませんが、翌年には確実に適用できるようにしたいものです。
本章では、「更正の請求」と「修正申告」の違い、それぞれの適用条件、具体的な手続き方法について解説します。
3-1. 更正の請求とは?
更正の請求とは、「本来よりも多く税金を支払ってしまった場合に、税務署に還付を求める手続き」 です。
✅ 更正の請求が可能なケース
- 申告時に 10万円控除を適用しなかった(後から適用可能)
- 所得計算の誤りにより、本来より多く税額を申告してしまった
✅ 更正の請求ができないケース(誤った適用をしても変更不可)
- 10万円控除から65万円控除に変更する場合
- 特別控除の適用なしから65万円控除を適用する場合
3-2. 修正申告とは?
修正申告とは、「本来よりも税額が少なく申告されていた場合に、納税額を増やすための手続き」 です。
これは、納税者側がミスを認識し、税額を正しく修正するためのものです。
✅ 修正申告が必要なケース
- 申告時に 65万円控除を適用したが、実は適用要件を満たしていなかった場合
- 青色申告の帳簿要件を満たしていないのに控除を適用していた場合
3-3. 更正の請求と修正申告の比較
項目 | 更正の請求 | 修正申告 |
目的 | 税額を減らす(還付を受ける) | 税額を増やす(追加納税) |
適用ケース | 申告時に適用しなかった控除を適用したい | 申告時に誤って適用した控除を取り消す |
期限 | 申告期限から5年以内 | 申告期限から5年以内 |
主な適用例 | 10万円控除を後から適用 | 65万円控除の適用ミスを修正 |
税務署の対応 | 審査の上、還付の可否を決定 | 受理後、追加納税が発生 |
✅ ポイント
- 更正の請求は「払いすぎた税金を取り戻す手続き」 なので、税務署の審査が必要。
- 修正申告は「不足分を納める手続き」 なので、税務署は基本的に受理する。
- 更正の請求は「全てのケースで認められるわけではない」 ため、事前に適用条件を確認することが重要。
3-4. 更正の請求の具体的な手続き
- 必要書類を準備
- 更正の請求書(国税庁のウェブサイトからダウンロード可能)
- 10万円控除を適用しなかった確定申告書の控え
- 青色申告承認申請書の控え(10万円控除を適用できる前提となる書類)
A1-8 所得税の青色申告承認申請手続


A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続
2. 税務署へ提出方法
- 税務署窓口
- 郵送
- e-Tax(電子申請が便利)
3. 税務署の審査
10万円控除の適用忘れの場合、高度な税務判断を必要としないので、書類が整っていれば、スムーズに請求が認められることが多い。
4. 更正の請求の結果
- 認められれば、「所得税の更正通知書」が届き、「更正の請求書」に記載した銀行口座に還付金が振り込まれる。
- 過去5年分の更正の請求をすれば、過去5年分の払い過ぎた税金が還付される。
- 概ね2~3か月程度で還付されることが多い。
- 否認された場合は「更正すべき理由がない通知書」が届く。
3-5. 65万円控除ミスの場合の具体的な対応策
確定申告書で65万円控除を適用していなかった場合には、過去の確定申告書を修正することはできません。
よって、翌年から確実に65万円控除を適用できるようには、翌年の確定申告書や添付書面で「事業的規模」に該当することをしっかりと説明すると良いでしょう。
「事業」として認められるための具体的な管理業務の内容など、事業性を示す状況を記載するとより良いでしょう。
例えば、以下の点を確定申告書や添付書面で説明する方法が考えられます。
- 管理業務の具体的な内容や負担
- 賃貸収入の収益性や安定性
- 継続的な収益を確保するための努力や工夫
5棟10室基準を満たしていれば、事業の規模(棟数や室数など)をわかりやすく説明すると良いでしょう。
なお、5棟10室基準を満たしていない場合には、税理士に相談し、説得力のある書面を作成することをお勧めします。
💡 まとめ
✅ 更正の請求は「税額が減る場合」に適用され、5年以内に手続き可能!
✅ 10万円控除を適用し忘れた場合は、更正の請求で後から修正可能!
✅ 65万円控除を適用し忘れた場合は、更正の請求できないので要注意!
✅ 税務署の判断によって、更正の請求が認められるかどうかが決まるため、事前の準備が重要!
4. 青色申告特別控除についてよくある質問
青色申告特別控除については、65万円控除と10万円控除の違い、適用条件、修正方法など、多くの疑問が寄せられます。
本章では、特に質問が多い項目について詳しく解説します。
4-1. 事業的規模の判断は税務署に相談すべき?
事業的規模の判断について税務署に相談することは可能ですが、必ずしも明確な回答が得られるとは限りません。
税務署の担当者によって見解が異なる場合もあるため、以下の点を考慮して判断するのがよいでしょう。
✅ 相談前に確認すべきポイント
- 5棟10室基準を満たしているか?
- 事業としての継続性・反復性があるか?
- 管理業務が業として行われているか?
✅ 税理士に相談するメリット
- 過去の事例に基づいたアドバイスがもらえる
- 申告時に必要な書類の整備について指導が受けられる
4-2. 修正申告をするとペナルティはある?
修正申告を行うとペナルティ(加算税や延滞税)が発生する可能性があります。
✅ 発生する可能性がある税金
- 過少申告加算税(税額が増えた場合に課される)
- 延滞税(納税期限を過ぎている場合に課される)
✅ ペナルティを回避する方法
- 自主的に早めに修正申告を行う
- 課税庁からの指摘前に訂正する(指摘後だと加算税の割合が増える場合がある)
4-3. 青色申告承認申請を出していないと控除は受けられない?
青色申告特別控除を適用するには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出している必要があります。
✅ 申請期限
- 新規開業の場合 → 開業から2ヶ月以内
- 既存事業者の場合 → 適用を受ける年の3月15日まで
💡 まとめ
✅ 事業的規模の判断は慎重に行い、税理士への相談が有効!
✅ 修正申告にはペナルティが発生する可能性があるため、早めの対応が重要!
✅ 青色申告特別控除を受けるためには、事前の承認申請が必須!
5. まとめ
- 65万円控除と10万円控除の違いは「事業的規模」かどうか
【65万円控除への修正】
- 65万円控除は確定申告時に適用しないと後で修正できない(過去に遡って修正不可)
- 65万円控除は後で修正できないので、最初の事業的規模の判定が極めて重要
- 翌年から65万円控除を適用する場合には、確定申告書や添付書面で「事業的規模」に該当することをアピールする
【10万円控除への修正】
- 10万円控除は適用し忘れても後で修正できる
- 「更正の請求」手続きで過去5年分遡って修正できる
- 10万円控除が認められれば、5年分の払い過ぎた税金が戻ってくる
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