5棟10室未満は?判例等でみる事業的規模の判定基準を税理士が解説

「不動産賃貸業をしているけれど、事業的規模かどうかの判断が難しい…」と悩んでいませんか?

この記事では、「5棟10室」未満であっても事業的規模として認められるための具体的な対応策をご提案します。

事業的規模の判断に用いられる7つのポイント(営利性や人的・物的設備の有無など)を解説し、さらに、現状で行える短期的な対応策と、長期的に事業を発展させるための戦略をご紹介します。

この記事を読み終えていただければ、「5棟10室」未満の不動産賃貸業でも、事業的規模として認められる可能性を高める方法を理解し、適切に実践することで、青色申告特別控除の65万円控除や節税効果を最大限に引き出せる知識が身につきます。

不安を解消し、不動産事業をより安定させるために、ぜひ最後までご覧ください。

執筆者:古林国博
古林 不動産鑑定士・税理士・公認会計士事務所 代表
不動産オーナー様が抱える「節税・相続・不動産経営」などのお悩みをまるごと解決へと導くお手伝いを行っています。
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1. 「事業的規模」とは?実質基準と形式基準の理解

不動産賃貸業において、「事業的規模」とは単に規模の大きさを指すだけでなく、税務上で重要な概念として扱われています。

特に、青色申告特別控除65万円を適用するためには、この「事業的規模」に該当しているかどうかで判断されます。

本章では、「事業的規模」の定義と判断基準、また形式基準としてよく知られる「5棟10室」の位置づけについて解説します。

1-1. 原則は実質基準

「所得税基本通達」では事業的規模の判定について以下のように定めています。

所得税基本通達26-9
(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)

26-9 建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。

(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。

(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

「事業的規模」とは、不動産賃貸業が社会通念上「事業」として認められる規模で行われているかどうかを指します。

不動産貸付けが「事業」として認められるには、以下の基準が適用されます。

  • 原則:実質基準で判断
    • 不動産の貸付けが「社会通念上、事業と称するに至る程度の規模」で行われているかどうか。
    • 単に物件数や規模だけでなく、運営の内容や状況も考慮して判断されます。
  • 例外:形式基準による簡便的判断
    • 貸室数がおおむね10室以上または独立家屋がおおむね5棟以上の場合、原則として「事業的規模」と認められます。ただし、この形式基準を満たしていても、運営状況次第では実質基準で再判断される可能性があります。

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「事業的規模」と「5棟10室」基準との関係を示せば、以下のような図になります。

原則的な判断基準は「実質基準」です。

「5棟10室」未満であっても、「社会通念上、事業と称するに至る程度の規模」の不動産賃貸業であれば、「事業的規模」として認められるということです。

「5棟10室」以上であれば、基本的には「事業的規模」と認められます

「5棟10室」以上でも「事業的規模」をはみ出している部分は、所得税基本通達にある「特に反証がない限り」の部分に該当し、税務署に「5棟10室以上だが、実質的に事業的規模に該当しない」と反証されて否認される場合です。

これは、極めて稀なケースなので、「5棟10室」以上であれば、ほぼ「事業的規模」と認められると考えて良いでしょう。

1-2. 「5棟10室」基準はあくまで目安

原則的な判断基準の「実質基準」は、「社会通念上」「実質的に判断する」と抽象的であり、実務上の解釈に個人差が生じることや、税務署による判断が一貫しない場合もあります。

そこで、誰でも簡単に判断しやすいように「5棟10室」という形式的な基準が設けられています。

ところが、この形式基準は「おおむね」5棟10室以上となっています。

5棟基準
1戸建てやアパートの棟数が合計で5棟以上ある場合を指します。

10室基準
賃貸用の部屋数が合計で10室以上ある場合を指します。

そうなると、9室は?4棟は?という疑問が出てきます。

「5棟10室」はあくまで目安であって、「社会通念上、事業と称するに至る程度の規模」であるかどうかを実質的に判断する必要があります。

実務上の判断は、以下のフローチャートで考えて良いでしょう。

次章では、「社会通念上、事業と称するに至る程度の規模」かどうかの具体的な判断内容を見ていきます。

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2. 実質基準とは?国税不服審判所の裁決事例から学ぶ判断基準

「事業的規模」の判断において、原則として用いられるのが実質基準です。

形式基準である「5棟10室」が目安として機能する一方で、実務や税務調査では「社会通念上、事業と称するに至る程度の規模」を総合的に判断するために、実質基準が重視されます。

本章では、実質基準の具体的な判断要素について、国税不服審判所の裁決事例をもとに詳しく解説します。

なお、以下でみる裁決事例の争点は、すべて「事業」(事業的規模)に該当するかどうかです。

2-1. 平19.12.4、裁決事例集No.74 37頁

平19.12.4、裁決事例集No.74 37頁

事案の概要

税理士である納税者(請求人)が所有する不動産の貸付けについて、税務当局は「不動産所得を生ずべき事業」には該当しないと判断し、所得税の更正処分や過少申告加算税の賦課を行った。

これに対し請求人は、当該貸付けは事業に該当するとして一部取消しを求めた事案。

納税者(請求人)
• 職業・役職: 税理士法人の代表社員および同族会社2社(H社等)の代表取締役。
• 収入構成: 総収入の約50%を給与所得等から得ており、不動産貸付けからの収入は副次的と判断されている。
• 不動産貸付けの背景: 本件建物を建設・維持するために1億円超の借入金を調達。不動産賃貸業を「事業」として主張している。

物件の概要
【建物】
・構造: 1棟3階建ての貸事務所。
・用途:
  1階: 駐車場(22台分)。
  2階: 税理士事務所(請求人の業務用)。
  3階: 会議室・休憩室等。
・賃貸先: 請求人が役員を務める同族会社2社。
【駐車場】
・台数: 6台分のうち2台分のみ賃貸契約あり(残りは賃借人募集なし)。
・利用者: 親族または近隣者が無償で利用している場合あり。
【収入と経費】
・賃貸収入: 年間約900~950万円。
・青色申告特別控除前の不動産所得: 約200~300万円。
・借入金: 建物建設や駐車場取得のため1億円以上を調達。

主張
【税務当局の主張】
・貸付先は請求人が主宰する同族会社2社および親族のみであり、限定的かつ専属的である。
・事業遂行の危険負担や労力が少なく、規模も社会通念上「事業」とは認められない。
【請求人の主張】
・貸付収入は年間約950万円で営利性があり、事業として十分成立している。
・投資額(借入金)が多額であり、これ自体が事業性を示す。
・税理士事務所としての業務と連動して計画的に行われている。

審判所の判断
・営利性や継続性はあるものの、貸付けの対象が同族会社や親族のみであり、汎用性が乏しい。
・貸主としての業務負担は軽微で、賃貸料の改定や賃借人募集の必要がなく、企画性や危険負担が希薄。
・不動産貸付けに伴う実質的な事業活動は行われておらず、社会通念上「事業」とは認められない。

事業性の判断基準

「事業性」を判断する基準として、最高裁の昭和56年判決に基づき、次の7点を総合的に考慮すべきとされています。

  1. 営利性・有償性
  2. 継続性・反復性
  3. 自己の危険と計算における事業遂行性
  4. 精神的・肉体的労力の程度
  5. 人的・物的設備の有無
  6. 貸付目的
  7. 職歴・社会的地位・生活状況

主な事実の検討

  1. 営利性・有償性
    請求人は年間約900万円の賃貸収入を得ているが、不動産所得の金額は200万~300万円程度であり、安定的な収益とされる。
  2. 継続性・反復性
    請求人は継続的に貸付を行っているが、主な貸付先が親族や自身が役員を務める同族会社で限定されている。
  3. 自己の危険と計算における事業遂行性
    請求人は多額の借入金(1億円以上)を投じて不動産を取得したが、貸付先が限定され、事業としての企画性や危険負担は乏しいと判断された。
  4. 精神的・肉体的労力の程度
    建物や設備の維持管理は主に賃借人が行っており、請求人の労力は少ないと認定された。
  5. 人的・物的設備の有無
    貸付物件は1棟の建物と駐車場2台分で、規模が小さく、物的設備も限定的。
  6. 貸付目的
    貸付物件は主に自身の会計事務所や親族の利用を目的としており、第三者への広範な貸付とは異なる。
  7. 職歴・社会的地位・生活状況
    請求人の収入の約半分は給与所得であり、不動産貸付は副次的な活動と認められた。

結論

裁決では、請求人の不動産貸付は社会通念上「事業」と認められる規模や条件を満たしていないと判断されました。主な理由は次の通りです。

  • 貸付先が限定されている(同族会社や親族)。
  • 管理や労力が軽微で、事業としての積極的な遂行性がない。
  • 不動産貸付は副次的な収入源であり、事業性を認めるには至らない。

その結果、原処分庁の判断が支持され、請求人の主張は認められませんでした。

2-2. 平16.9.27裁決、裁決事例集No.68 59頁

平16.9.27裁決、裁決事例集No.68 59頁

事案の概要

本件は、ある納税者が平成12年~14年分の所得税に関して、青色申告特別控除や専従者給与を適用した申告を行ったものの、税務当局がそれを不動産所得を生ずべき「事業」に該当しないとして更正処分や過少申告加算税を課したことに対し、その取消しを求めたも。

納税者(請求人)
• 人物: 請求人は、F社(同族会社)の代表取締役社長。
• 所得:
  主な収入はF社等からの給与所得(年間約1,100~1,300万円)。
  賃貸収入は年間約760~880万円で、副次的収入とされる。
• 青色申告:
  青色事業専従者(配偶者)給与を年間約300万円計上。
  青色申告特別控除(55万円)を申告。

物件の概要
• 貸付物件: 請求人が相続等で取得した事務所・倉庫及び土地。
• 貸付先: F社1社への専属貸付。
• 物件数: 2棟(倉庫1棟、事務所1棟)
• 階数:
  倉 庫: 階数についての具体的な記載はない。
  事務所: 2階建て(一部はF社所有の事務所と1階部分が一体化している)
• 収入: 賃貸料収入は年間約760~880万円。
• 管理内容:
  実際の維持管理業務はF社が主導。
  配偶者が週4日程度、清掃や財務管理に従事。
• F社の業績に応じて賃貸料が減額されるなど、貸主としての経済的危険負担が少ないと評価される。

主張
【税務当局の主張】
・貸付けは同族会社1社への貸付けのみで事業的規模に達していない(形式基準である「5棟10室」を満たさない)。
・他の給与所得があり、不動産貸付収入は副次的である。
・維持管理業務は軽微である。
【請求人の主張】
・規模判定は形式基準だけでなく実質を考慮すべき。収益性や維持管理業務から事業規模といえる。
・専従者が清掃や財務管理に従事しており、業務負担は軽微ではない。

審判所の判断
【事業性の基準】
事業性は営利性、継続性、自己責任性、業務負担、設備、目的などを総合的に判断。
形式基準(5棟10室)は十分条件にすぎず、社会通念に従い実質的に判断すべきとした。
【判断結果】
・不動産貸付けは同族会社1社への専属的な貸付けで、事業性が希薄。
・維持管理業務は実質的に賃借人が主導しており、貸主の負担は軽微。
・形式基準を満たさず、収入の副次性や業務内容からも社会通念上「事業」とはいえない。

結論
本件不動産貸付けは「事業」に該当せず、税務当局の更正処分は適法とされた。

2-3. 平8.7.31裁決、裁決事例集No.52 41頁

平8.7.31裁決、裁決事例集No.52 41頁

事案の概要

納税者(請求人)は、自身が所有する建物を賃貸し、不動産所得を計上して青色申告を行っていた。

しかし、税務当局はその貸付けが「不動産所得を生ずべき事業」に該当しないと判断し、青色事業専従者給与の必要経費算入を否認、所得税の更正処分および過少申告加算税を課した。

これに対し、請求人は更正処分および賦課決定処分の取り消しを求めた。

納税者(請求人)
• 職業と背景: 不動産賃貸業を営む個人事業主で、青色申告を行い、子であるFを青色事業専従者として給与を支給。
• 収入: 平成5年中の賃貸料収入は約1,600万円、青色事業専従者給与は300万円を支払済み。

物件の概要
・所在地: P市R町1丁目2番地17号。
・規模: 1階部分(22.8㎡)を賃貸利用。
・賃貸先: 株式会社G(G社)のみ(単独貸付)。
・契約内容:
  賃貸料: 月額130万円。
  契約期間: 平成4年9月から平成6年8月。
・特徴: 2階部分は未賃貸状態で、現状では賃貸可能な状態にない。
(窓がなく、1階店舗を通らなければアクセスできない)
・賃貸の特殊条件: 建物は地域の再開発予定地にあり、再開発が進行すると建物の明け渡しが必要。

主張
【税務当局の主張】
・貸付けは1物件・22.8㎡の規模で、賃貸先は1社(G社)のみ。
・社会通念上「事業」には該当しない。
【請求人の主張】
・本件建物の貸付けは賃貸料収入1,500万円以上あり、「事業的規模」といえる。
・維持管理業務や会合出席など、事業活動に準じた活動を行っている。

審判所の判断
・貸付物件は1棟のみで貸付面積が22.8㎡と小さく、賃貸先は1社限定。
・管理や修繕の多くを賃借人が行っており、納税者(請求人)の業務負担は軽微。
・収入規模は大きいが、貸付けが再開発までの一時的なものである。
・以上を総合勘案し、社会通念上「事業」とは認められない。
・よって、「事業的規模」には該当せず、青色事業専従者給与の必要経費算入は認められないとした。

結論
• 本件建物の貸付けは「不動産所得を生ずべき事業」に該当しない。
• 請求人の主張には理由がなく、審査請求は棄却された。

2-4. 国税不服審判所の裁決事例まとめ

本章では、「社会通念上、事業と称するに至る程度の規模」の判断基準を、国税不服審判所の裁決事例から解説しました。以下にポイントを整理します。

  • 実質基準が基本

不動産の貸付けが事業として認められるためには、単なる「規模」だけではなく、運営の具体的な内容や状況が重要。

特に賃貸料収入の安定性、維持管理業務の頻度・労力が判断に大きく影響します。

  • 形式基準はあくまで目安

「5棟10室」基準は簡便的な目安であり、それを満たさない場合でも事業的規模と認められる可能性があります。

一方で、形式基準を満たしていても、実質的な運営状況が乏しければ否認される場合もあるため注意が必要です。

  • 裁決事例の示唆

不動産所得が事業的規模と認められない場合は、
・ 賃貸物件が1物件のみや小規模の場合
・ 同族会社や親族への貸付のみの場合
・ 専従者が賃貸物件の管理業務を行っていない場合

不動産所得が事業的規模と認められるには、
・ 貸付物件は最低でも2物件以上が必要
・ 第三者への貸付が必要
・ 賃貸物件の維持管理に相応の労力がかかること。
これらが総合的に判断される。

「事業的規模」の認定には、一義的な基準ではなく多角的な視点が必要です。

「5棟10室」未満の場合には実質基準での判断が必要

「5棟10室」未満の場合には、単に物件数や規模だけで判断されるわけではありません。

最高裁の昭和56年判決によれば、不動産賃貸業が事業的規模に該当するかどうかは、次の7つの要素を総合的に考慮することが必要です。

  1. 営利性・有償性
    賃貸活動が営利を目的としていること、また対価が有償であること。
  2. 継続性・反復性
    賃貸活動が継続的かつ反復的に行われていること。
  3. 自己の危険と計算における事業遂行性
    賃貸活動の収益やリスクを自ら負担し、自らの計算に基づいて運営されていること。
  4. 精神的・肉体的労力の程度
    賃貸物件の運営にあたり、どの程度の精神的および肉体的労力が投じられているか。
  5. 人的・物的設備の有無
    賃貸事業に必要な人材や設備が備わっているか。
  6. 貸付目的
    賃貸が収益目的であるか、それとも他の目的(例えば個人的援助や趣味)を主としているか。
  7. 職歴・社会的地位・生活状況
    賃貸事業者の職歴や社会的地位、生活の状況が事業性を裏付けるものかどうか。

これらの基準をもとに、形式基準を満たしていない場合でも、実質的に事業的規模であることを主張することが可能です。

逆に言えば、「5棟10室」未満の場合には、これらの基準をクリアしているかどうかを慎重に検討し、税務署に対して納得のいく説明を行う準備が必要です。

本章で取り上げた事例を参考に、不動産賃貸業の運営状況を見直すことが重要です。

次章では、こうした基準を踏まえた上で、具体的な対応策について解説します。

3. 「5棟10室」未満の場合の具体的な対応策

「5棟10室」の基準を満たさない場合でも、「社会通念上、事業と称するに至る程度の規模」と認められるためには、実質的な事業性をアピールすることが重要です。

この章では、具体的な対応策を短期的・長期的な観点からご紹介します。

3-1. 今すぐできる対応策

「5棟10室」未満の場合、まずは日常業務の中で事業性を示す工夫を行うことが求められます。

以下のポイントを参考に、すぐに取り組める対策を実践しましょう。

①管理業務の充実と記録の徹底

日々の管理業務を積極的に行い、その記録を残すことで事業性を証明する材料を増やします。

• 賃貸料の収受や敷金の管理
• 契約書の作成・更新
• 賃借人からの問い合わせ対応やトラブル処理
• 物件の定期的な清掃や点検
• 無断駐車の対応や近隣トラブルの防止

これらの業務をこなしている場合、必ず記録を残し、管理ノートやシステムで管理することが重要です。


②確定申告時の添付書面などで「事業性」をアピール

確定申告書に「事業」として認められるための具体的な管理業務の内容や、事業性を示す状況を記載しましょう。

例えば、以下の点を添付書面で説明する方法があります。

• 管理業務の具体的な内容や負担
• 賃貸収入の収益性や安定性
• 継続的な収益を確保するための努力や工夫

税理士に相談し、説得力のある書面を作成することをお勧めします。


③税務調査への備え

「事業的規模」であることを税務署に説明できるよう、証拠となる書類や記録を整備しておくことも重要です。

• 賃貸契約書や領収証
• 不動産管理の記録
• 経費の明細や証憑書類

3-2. 長期的な対応策

長期的には、不動産事業をさらに発展させ、「5棟10室」に近づける規模に拡大することが有効です。

不動産事業の健全な発展が大前提になりますが、65万円の特別控除や青色事業専従者へ給料を支払うことによる所得分散効果など、節税効果が大きい場合には、長期戦略的に規模の拡大も十分選択肢に入るでしょう。

そのためには、節税効果や費用対効果などを十分にシミュレーションする必要があります。

①規模の拡大

「5棟10室」に近づける規模を目指すことで「事業的規模」と認められる可能性を高めます。

• マンション、アパートや貸家の購入・新築
• 駐車場の拡張や新設
• テナントビルなど収益性の高い物件の取得、運用

規模を拡大する際は、投資効果や運営コストを十分にシミュレーションし、収支のバランスを確認することが不可欠です。


②節税効果を考慮した長期戦略

不動産事業の規模を拡大することで、以下の節税効果を得ることが可能です。

• 青色申告特別控除65万円の適用
• 青色事業専従者給与の支払による所得分散効果
• 減価償却費を活用した所得圧縮効果

これらの節税効果を最大限活用するには、不動産収入や運営コストを含めた長期的な税務戦略が重要です。


③専門家への相談

不動産事業の拡大を計画する際は、税理士や不動産コンサルタントなどの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。

特に、事業的規模への拡大が節税にどの程度寄与するかを具体的にシミュレーションすることが大切です。


「5棟10室」未満であっても、事業的規模として認められる可能性は十分にあります。

そのためには、日々の業務内容を充実させ、記録を徹底し、税務署に対して積極的に事業性をアピールすることが重要です。

また、長期的な視点で規模拡大を検討し、専門家のサポートを得ながら健全な事業運営を目指しましょう。

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4. まとめ

  • 「事業的規模」の判定基準は「実質基準」が原則
  • 「5棟10室」基準はあくまで目安
  • 裁決事例からの学び「複数物件、第三者へ貸付、管理業務の充実」
  • 実質基準の具体的な判定方法としては、最高裁判例の7つの要素を総合的に判断する
  • 今すぐできる対応策:管理業務の充実と記録の徹底
  • 長期的な対応策:「事業的規模」による節税効果が大きい場合には「5棟10室」に近づける規模を目指す

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