自分でできる不動産の評価!調べ方と計算方法を不動産鑑定士が解説

「不動産の価値を知りたいけど、どうやって計算すればいいのかわからない…」と悩んでいませんか?

不動産鑑定評価は費用がかかるし、不動産会社の無料査定は後々面倒そうだし、なんとか自分で調べられないかと悩んでいる方も多いはずです。

そこで、不動産の時価評価を自分で行うための基本的な方法を、不動産鑑定士・税理士の視点から解説します!

公的な指標を使えば、土地の時価を簡単に把握できます。
建物については、固定資産税評価額を時価の代用として活用することが考えられます。

ここでは、土地の時価評価に使える公的指標の調べ方や、建物の価値を固定資産税評価額で代用する考え方について具体的に解説します。

この記事を読み終えていただければ、自分で簡単に不動産の時価を評価する方法が理解できるようになります。ぜひ参考にしてください。

・ 土地は公的指標を用いて時価評価する
・ 建物は固定資産税評価額を時価の代用とする
・ 価値が大きい不動産は不動産鑑定評価を依頼すべき

執筆者:古林国博
古林 不動産鑑定士・税理士・公認会計士事務所 代表
不動産オーナー様が抱える「節税・相続・不動産経営」などのお悩みをまるごと解決へと導くお手伝いを行っています。
飛込み営業で鍛えられた「親しみやすさ」と不動産と相続に特化した「高い専門性」でサポートいたします。
詳しいプロフィール

1.自分でできる不動産の時価評価

不動産の「時価」とは、市場でその不動産が現時点で取引されると仮定した場合の価格を指します。「今売ったら、いくらで売れるか」と言い換えることもできます。

実際に売りに出せば「時価」は分かるのですが、売りに出せないから「時価評価」が必要になります。

時価評価の代表は、不動産鑑定評価です。最も正確で信頼性の高い時価である鑑定評価額を算出します。

しかし、不動産鑑定評価はそれなりの費用がかかるので、できれば避けたいところです。

ここでは、不動産鑑定評価の代替手段として、土地と建物それぞれの方法を紹介します。

1-1. 土地

土地の時価評価の方法として、次の公的指標を用いた時価評価の方法を紹介します。

  • 地価公示価格
  • 都道府県地価調査価格
  • 相続税評価額
  • 固定資産税評価額
  • 取引価格

公的指標を用いた時価評価の方法は、以下のような場面で使えるでしょう。

  • 概算価格で十分事足りる場合
  • 遺産分割
  • 節税

遺産分割や節税については、複雑な注意点などもあるので、担当の弁護士や税理士とご相談されることをお勧めします。

1-2. 建物

建物の時価評価に関しては、土地のように公的な価格指標がないため、評価が非常に難しいのが現実です。

現状では、不動産鑑定評価以外に適切な評価方法はありません。

不動産鑑定評価の代替手段としては、時価との乖離が大きいとしても、固定資産税評価額を使わざるを得ないケースが多く見受けられます。

しかし、固定資産税評価額を用いることには一定のリスクが伴います。

本記事では、固定資産税評価額の現実的な利用とそのリスクについて解説します。

2.土地

2-1. 土地価格の指標

ここでは、土地の価格について、公表されている指標を紹介します。

これらの指標では、平米単価が使われています。

不動産会社などで使われる坪単価とは違う点にご注意ください。

坪単価に「0.3025」を掛けると平米単価になり、平米単価を「0.3025」で割ると坪単価になります

  • 地価公示価格

地価公示法に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、
毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示(令和6年地価公示では、26,000地点で実施)するもので、社会・経済活動についての制度インフラとなっています。(国土交通省HPより)

  • 都道府県地価調査価格

国土利用計画法施行令第9条にもとづき、都道府県知事が、毎年7月1日時点における標準価格を判定するものです。土地取引規制に際しての価格審査や地方公共団体等による買収価格の算定の規準となることにより、適正な地価の形成を図ることを目的としています。(国土交通省HPより)

  • 相続税評価額

不動産の相続税評価額は、相続が発生した際に、相続財産(不動産)に課税するために算出される評価額です。
この評価額は、税法に基づいた特定の評価基準(路線価方式、倍率方式)に従って算定されます。

  • 固定資産税評価額

固定資産税評価額は、土地や建物などの固定資産に対して課税される税金の基準となる価値です。
この評価額は、各地方自治体が3年ごとに実施する固定資産評価基準に基づいて定められます。

  • 取引価格

国土交通省が不動産の取引当事者を対象に実施しているアンケート調査に基づいて公表されている情報です。不動産の売買価格、つまり「成約価格」とも呼ばれ、売買物件の特定が容易にならないよう加工されています。
(不動産情報ライブラリHPより)

まとめ

これらの価格の基となる「地価公示」「都道府県地価調査」「相続税路線価」「固定資産税路線価」は、各監督官庁から委嘱を受けた不動産鑑定士が不動産鑑定評価を行って算出した鑑定評価額を基に決定されています。

種類監督官庁評価時点公表時期時価との関係
不動産鑑定評価国土交通省任意に決定できる任意時価
地価公示価格国土交通省毎年1月1日毎年3月下旬時価
都道府県地価調査価格都道府県毎年7月1日毎年9月下旬時価
相続税評価額 (路線価)国税庁毎年1月1日毎年7月1日時価の80%
固定資産税評価額市町村毎年1月1日毎年4~6月時価の70%
取引価格国土交通省時価

2-2. 公的指標を用いた時価評価の方法

時価評価の方法として、「こうしなければならない」という決まりはありません。

ここでは、誰でも簡単にできる方法を紹介します。

この方法は、主に一般的な住宅の土地などで有用なことが多いでしょう。

全体の流れ

①  固定資産税評価額を時価水準に修正する

②  相続税評価額を時価水準に修正する

③  ①と②を案分計算・時点修正する

④  価格水準を検証する

地価公示価格・都道府県地価調査価格・取引価格の位置づけ

一般の方にとって、地価公示価格や都道府県地価調査価格から、特定の土地の概算価格を導き出すことは難易度が高いと思います。
また、取引事例の価格は、その不動産が特定されておらず、その不動産が所在する地域しかわかりません。
したがって、これらの価格は、価格水準が妥当かどうかを検証するために使うと良いでしょう。

注意点】

公的指標を用いた時価評価の方法で算出される価格は、あくまで概算価格ですので、正確な時価とかい離が生じる可能性があります。
とくに、金額が大きい不動産、規模の大きな不動産、特殊な不動産などについては、正確な時価とかい離が大きくなる傾向にあるので、不動産鑑定評価をお勧めします。

都心部の中高層建物が建ち並ぶ地域では、そもそも公的指標と時価がかい離している傾向にあります。
各指標と時価とのかい離が大きい都心部などでは、時価としての信頼性に欠ける点に注意してください。
公的指標の情報が不足している地域では、概算価格の算定自体が難しい場合もあります。

これら注意事項を念頭において、ご活用ください。

2-3. 固定資産税評価額を時価に修正する方法

  • 「固定資産税納税通知書・課税明細書」を用意する

毎年4~6月頃に市町村から送られてきます。
手元に見当たらない場合は、役所で「名寄帳」や「評価証明書」を取得すると良いでしょう。
各市町村によって様式が異なるので、ここでは、東京都の「課税明細書」を例示します。

  • 計算方法

固定資産税評価額 = 価格:45,000,000円

固定資産税評価額は時価の70%に設定されているので、70%で割り戻せば、時価水準に修正できます。

45,000,000円 ÷ 70% = 64,285,714円

四捨五入して、時価水準に修正した価格:64,300,000円としても良いでしょう。

  • 注意点

固定資産税評価額は、固定資産評価基準に基づいて算出されています。
通常の土地の取引では、面積が大きい土地ほど土地単価が低くなる傾向にあります。
これは、土地購入者が不動産開発業者などに限られるなどの理由のためですが、固定資産評価基準ではこのような面積が大きくなることによる減価は考慮されません。
したがって、周囲の土地と比べて面積が大きい土地は、減額すべきところを減額できていないので、割高に算出される可能性があることに注意してください。

2-4. 相続税評価額を時価に修正する方法

「相続税評価額」を算出するにあたっては、以下の2パターンが考えられます。

  • 相続税の申告をした・する予定の場合

 ① 担当の税理士に「相続税評価額」がいくらか確認する

 ② 「相続税評価額 ÷ 0.8」と計算して時価水準に修正する

 ③ 「2-5. 案分計算と価格水準の検証」へ進む

  • 相続税の申告をしていない・する予定もない場合

 以下の「2-4.1.相続税路線価の調べ方」をご覧ください。

 ① 相続税路線価を調べる

 ② 相続税路線価から相続税評価額を算出する

 ③ 「相続税評価額 ÷ 0.8」と計算して時価水準に修正する

2-4-1. 相続税路線価の調べ方

国税庁の「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」にアクセスする

調べたい土地のある都道府県を選択する

「路線価図」をクリックする

調べたい土地のある市町村、地名ページをクリックする

以下のような路線価図が表示される

調べたい土地の路線価を確認する

路線価図には、道路ごとに数字とアルファベットが書かれています。

「340D」は、「この道路に面している土地は、1㎡あたり340,000円(340千円)で評価する」という意味になります。

アルファベットの「D」は、「借地権割合が60%」を意味します。

借地権や底地でなければ、無視して問題ありません。

2-4-2. 路線価方式による計算方法

【基本の計算式】
相続税評価額の基本的な計算方法は、「路線価 × 地積」です。

固定資産税の課税明細書に地積が記載されていることを確認してください。
「登記地積」と「現況地積」が異なる場合、「現況地積」を使ってください。

相続税評価額 = 路線価340,000円/㎡ × 現況地積150㎡ = 51,000,000円

相続税評価額は時価の80%に設定されているので、80%で割り戻せば、時価水準に修正できます。

51,000,000円 ÷ 80% = 63,750,000円

一般的な住宅の土地であれば、これで事足りることが多いと思います。

相続税評価額の計算方法は、「路線価 × 地積」を基にして、その土地の個別条件(奥行が長さ、角地、形がいびつ等)を補正する計算方法が定められています。

しかし、一般の方にはなかなか難しいと思いますので、ここでは割愛します。

2-4-3. 注意点

  • 路線価がついていない土地

路線価を調べてみると、上記のように道路に路線価がついていない場合や、路線価図がない地域もあります。
この場合は、路線価方式ではなく、倍率方式で計算することになります。
固定資産税評価額に一定の倍率を乗じることによって評価額を計算します。

倍率方式では、固定資産税評価額を基に計算しますので、倍率方式から時価水準の価格を算出することは、固定資産税評価額を修正して時価水準の価格を算出することと同じことになってしまいます。
よって、相続税路線価のない地域にある土地は、相続税評価額を算出せず、固定資産税評価額のみを修正して時価水準の価格を算出することになります。

ただし、倍率地域では、固定資産税評価額を70%で割り戻した金額は、実際の時価とかい離する傾向にあるので、時価としての信頼性に欠けることも多く、注意が必要です。

  • 正確な相続税評価額が必要な場合

正確な相続税評価額を算出するためには、2つの方法が考えられます。

・自分で計算する

一つは、相続税評価額の計算方法を解説するサイトを見て、自分でチャレンジする方法が考えられます。
ごく普通の住宅の土地であれば、自分でチャレンジしても問題ないでしょう。

・相続税専門の税理士事務所に依頼する

もう一つは、土地の相続税評価サービスを提供する税理士事務所に依頼する方法です。
相続税専門の税理士事務所では、5~10万円程度でサービス提供していることが多いようです。
形状や大きさなどが周りの土地と大きく違っている場合や、道路との高低差や無道路地といった特殊事情のある土地の場合には、評価方法も複雑になるので、専門の税理士事務所に依頼することをお勧めします。
じつは、土地の相続税評価の誤りによって、結構な頻度で、相続税を払い過ぎてしまっているケースが発生しています。
プロの税理士でも誤るのですから、土地の相続税評価はなかなか厄介です。
仮に、相続税を払い過ぎてしまったとしても、相続税の申告期限から5年以内であれば、相続税を取り戻すことができます。

2-5. 案分計算と価格水準の検証

2-5-1. 案分計算

ここまでで、

固定資産税評価額を時価水準に修正した価格:64,300,000円

相続税評価額を時価水準に修正した価格:63,750,000円

を算出できました。

2つの価格には若干の差異があるので、案分計算で最終調整をします。

(64,300,000円 + 63,750,000円)× 1/2 ≒ 64,000,000円

なお、どちらか一方の価格が時価とのかい離が大きく妥当性を欠くような場合には、どちらか一方のみを時価として使うことも考えられます。

2-5-2. 時点修正

固定資産税評価額と相続税評価額(路線価)は、1月1日を基準とした価額です。

不動産の価格は常に変動しているので、変動率が大きい場合には、1月1日から価格時点(価格を評価する基準日)までの変動を価格に反映させる必要があります。

① 地価公示価格・都道府県地価調査価格を調べる

「不動産情報ライブラリ」にアクセスします。

地図「地図表示」や地域の住所「地域検索」から調べたほうが便利でしょう。

調べたい土地の近くに、その土地と条件の似た「地価公示(標準地)」のポイントを見つけます。

ポイントをクリックして、「詳細表示」をクリックします。

地価公示(標準地)の詳細条件や、価格の変動率を確認することができます。

② 時点修正

地価公示価格・都道府県地価調査価格の評価時点は毎年1月1日です。

変動率を見ると、令和5年から令和6年までの変動率:5.0%

翌年も同じ変動率と仮定すると、

仮に、価格時点が令和6年8月1日なら、1月1日からの7か月分の変動率は、
5.0% × 7か月/12か月 ≒ 2.9%

時点修正(1月1日 ⇒ 8月1日)

64,000,000円(1月1日時点)× (100% + 2.9%) ≒ 65,900,000円(8月1日時点)

65,900,000円 ÷ 150㎡ ≒ 439,333円/㎡

この価格を簡便的に「土地の時価」として扱うことになります。

なお、価格を四捨五入するかどうか決まりがあるわけではないので、四捨五入しなくても問題ありません。

③ 坪単価

公的指標はすべて平米単価で表示されます。

不動産会社などで使われる坪単価とは違う点にご注意ください。

坪単価に「0.3025」を掛けると平米単価になり、平米単価を「0.3025」で割ると坪単価になります。

平米単価から坪単価へ修正すると、以下のようになります。

439,333円/㎡ ÷ 0.3025 ≒ 1,452,340円/坪

2-5-3. 価格水準の検証

上記で算出した価格が「時価」として妥当なものかどうかを検証するには、「取引価格」を確認すると良いでしょう。

取引価格は周辺に事例が少ないことが多いので、「不動産価格の情報をご覧になりたい方へ・データの検索・ダウンロード」から調べたほうが便利でしょう。

「種類」は「土地」を選択します。
事例が少ない場合は、検索期間を長くして検索すると良いでしょう。

検索結果一覧を表示する

ここでは、取引事例の場所などを特定できないので、あくまでざっくり価格水準を見ることしかできないことに注意してください。

調べている土地は、
総額:65,900,000円、㎡単価:439,333円/㎡、面積:150㎡、道路幅員:4.0m、住宅地

まず、異常値を排除する
例えば、
「商業地は排除する」
「取引総額が大き過ぎる(例えば3倍以上)ものは排除する」
「面積が小さすぎる(例えば50㎡未満)、大き過ぎる(例えば300㎡超)ものは排除する」
「道路幅員が違い過ぎる(例えば8m超)ものは排除する」
などの条件で、いらない事例を排除していくと、ある程度類似の事例が残ります。

可能であれば、残った事例について、「最寄駅」、「駅距離」などで、さらに類似の事例を絞ります。
その絞られた事例の「㎡単価」の欄を確認して、「㎡単価:439,333円/㎡」が時価として妥当かどうかを見極めます。

この例であれば、取引価格のほうが若干高めのようですが、時価としてそこまでおかしな数字ではないようです。

最終的にどう判断するかは個々人に委ねられますが、慎重な判断が求められる「遺産分割」や「節税」などの場面では、弁護士や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

3.建物

3-1. 建物の時価評価の現実

「土地」には路線価や公示価格といった公的な指標が存在し、比較的容易に評価額を算出することができます。
しかし、「建物」には、土地のような明確な公的指標が存在しません。

これは、建物の価値が土地のように一律に評価できないためです。
建物の価値は、その材質、築年数、維持管理の状況、用途、立地条件など、多くの要素に影響されます。
特に建物は時間とともに価値が減少する「減価償却」が発生します。これにより、建物の評価額は個別の建物ごとに大きく異なり、画一的な基準を設けることが困難となっています。

となると、建物の時価評価は、不動産鑑定評価がベストの選択となります。
しかし、費用がかかるのを避けたいときには、「建物の固定資産税評価額」が時価として代用されます。

建物の固定資産税評価額は、市町村が課税のために建物に対して付ける評価額です。
これは税額を算出する基準として使われるものであり、時価とかい離することが多いです。
固定資産税評価額は、建物が新しいときは時価の半分以下という低い金額が付けられ、建物が古い場合には時価よりも高い金額になるのが一般的です。

建物の固定資産税評価額は、土地と同じで、「固定資産税納税通知書・課税明細書」を確認します。

毎年4~6月頃に市町村から送られてきます。

手元に見当たらない場合は、役所で「名寄帳」や「評価証明書」を取得すると良いでしょう。

各市町村によって様式が異なるので、ここでは、東京都の「課税明細書」を例示します。

3-2. 建物が古い場合

古い建物がある不動産の評価では、建物がすでに価値を失っている場合、その存在が逆に負担となることがあります。
このようなケースでは、建物自体の価値がほとんどなく、むしろ解体費用がかかるため、建物の評価額がマイナスとして扱われることがあります。

・建物の経済的価値の減少
建物は時間とともに劣化し、特に築年数が大きくなるとその経済的な価値は減少します。
場合によっては、修繕費や維持費が増大するため、使用価値がほぼなくなることがあります。
このような場合、建物の評価額はゼロ近くまで下がります。

・取壊しの必要性
建物が使用不能、もしくは新たな建物を建てるために取り壊しが必要な場合、取壊しにかかる費用が発生します。
この取壊し費用は通常、土地の活用可能性を高めるために必要なコストですが、逆に現状では負担となるため、建物の存在が不動産の価値を減じる要因となります。

・土地価格から控除
こうした場合、不動産の総合評価では、まず土地価格が評価され、次にその土地を更地にするために必要な建物の取壊し費用を控除します。
結果として、建物の価値が事実上マイナスとなるため、建物付きの不動産全体の価格が土地単独の評価額よりも低くなることがあります。

このような不動産評価では、古い建物があることで生じる取壊し費用を考慮しなければならないため、建物が価値を持たないどころか、マイナスの評価を受けるケースが発生するのです。

3-3. 遺産分割の場合

遺産分割協議においては、相続人同士の話し合いで建物の時価をいくらにするか決められます。

相続人全員の同意が得られるのであれば、建物の時価として、固定資産税評価額を代用するのは有力な選択肢になります。

他に建物の評価額を表す適切な指標が存在しないので、仕方なく固定資産税評価額を代用するしかないのが現実です。

とくに、一般的な住宅の中古建物であれば、固定資産税評価額も数百万円程度のことが多いので、費用をかけてまで不動産鑑定評価を依頼する必要がないケースが多いでしょう。

賃貸物件や一棟ビルなど、価値が大きい建物は、不動産鑑定評価を依頼すべきでしょう。

関連記事

不動産鑑定とは?査定との違い・必要性が高い2つの場面を詳しく解説

遺産分割では時価が原則!不動産の評価方法を不動産鑑定士が解説

3-4. 節税の場合

建物の同族間売買など、法人税や所得税の節税の場合には、固定資産税評価額はほぼ使えないと考えたほうが良いでしょう。

このような場合には、建物の評価額が大きい場合が多く、時価とのかい離も大きいためです。

そうなると、税務署による否認リスクが高まることになります。

とくに、賃貸物件や一棟ビルなど、価値が大きい建物は、不動産鑑定評価を依頼すべきでしょう。

4.マンション

マンションは、大きな土地の上に建つ大きな建物の一部ですので、基本的には「土地」「建物」と同じです。

ただし、マンションの固定資産税評価額は、戸建住宅よりさらに時価とのかい離が大きくなる傾向にあるため、時価の代用として固定資産税評価額を使うのは不適切な場合が多いでしょう。

時価の代用としては、不動産ポータルサイトなどで同じマンションの売買事例や、類似のマンションの価格を確認すると良いでしょう。

その際の注意点は、以下のとおりです。

  • 成約価格と売出価格の違い

売出価格は成約価格より高めに設定されることが多いので、実際の成約価格も確認しましょう。

  • 築年数や状態の違い

同じマンション内でも、リフォームやメンテナンス状況によって価格が変わるため、部屋の状態をしっかり確認します。

  • 部屋の位置や向きによる価格差

階数や方角、角部屋かどうかで価格に差が出るため、これらの条件を考慮します。上層階や南向き、角部屋は一般的に高めです。

  • 市場のタイミングによる価格変動

不動産市場は経済や需給によって変動するため、最新の市場状況を反映させることが重要です。

  • 他の物件との比較

同じマンション内だけでなく、周辺エリアや設備の違う物件とも比較し、広い視点で価格を評価します。

  • 長期間掲載されている物件への注意

長く売れ残っている物件は価格が高すぎるか、何か問題がある可能性があるため、理由を確認しましょう。

  • 部屋のタイプ

マンションの部屋には1LDK、2LDK、3LDKなどさまざまな間取りタイプがあり、部屋の大きさや間取りによって価格が異なります。

また、家族向けか単身者向けかなど、ターゲット層によっても需要が異なるため、同じマンション内でも間取りに応じて価格が変動します。

これらを考慮して、なるべくマンションの正確な時価を把握することが大切です。

同一または類似マンションの坪単価がある程度把握できたら、評価するマンションの坪数をかけて、マンションの評価額を算出します。

坪単価に「0.3025」を掛けると平米単価になり、平米単価を「0.3025」で割ると坪単価になります。

5.まとめ

自分でできる【土地】の時価評価

公的指標を用いた時価評価の方法は以下の通り

 ①固定資産税評価額を時価水準に修正する方法

 ②相続税評価額を時価水準に修正する方法

 ③案分計算・地価公示価格を用いた時点修正

 ④取引価格を用いた価格水準の検証

【建物】の時価評価は自分ではできない

  • 建物の価値が小さい場合には、建物の固定資産税評価額を時価として代用する
  • 建物の価値が大きい場合には、不動産鑑定評価を依頼すべき

【マンション】の時価評価はネット検索

  • 不動産ポータルサイトなどでマンションの取引事例を確認
  • 注意点を確認しながら、坪単価を把握する
  • 坪単価に坪数をかけてマンション価格を算出する