遺産分割では時価が原則!不動産の評価方法を不動産鑑定士が解説

相続が発生すると、相続人間で不動産の評価方法が問題になることは少なくありません。

「どうやって適切な価値をつけるべきか?」
「誰の意見を参考にすればよいのか?」

このような悩みを抱えている方は少なくないでしょう。

実は、遺産分割では不動産の評価方法について法的な決まりはありません。
相続人全員の合意さえあれば評価方法は自由に選べますが、スムーズな遺産分割のためには、公平性・納得感が得られやすい「時価」を基準とすべきです。

ここでは、いくつかある不動産の評価方法について確認し、どの評価方法をどのように選べばよいのかについて解説します。
激しい意見対立が予想される場合の遺産分割の流れもあわせて解説します。

この記事を読み終えていただければ、スムーズに遺産分割の話を進めるための不動産の評価方針についての知識が得られます。
適切な方法で不動産の価値を判断し、相続トラブルを避けたい方にぜひ参考にしていただければ幸いです。

執筆者:古林国博
古林 不動産鑑定士・税理士・公認会計士事務所 代表
不動産オーナー様が抱える「節税・相続・不動産経営」などのお悩みをまるごと解決へと導くお手伝いを行っています。
飛込み営業で鍛えられた「親しみやすさ」と不動産と相続に特化した「高い専門性」でサポートいたします。
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1.遺産分割における不動産の評価基準

遺産分割において、不動産の評価方法に法的な決まりはありません。

相続人同士の協議や合意によって評価方法を自由に選択できます。

1-1. 評価方法は協議で決める

遺産分割の際に不動産の評価を行う場合、法律上で特定の評価方法を強制する規定はありません。

相続税を計算する際には「相続税路線価」や「固定資産税評価額」といった基準が使われますが、これらは税金計算のためのものであり、遺産分割の評価基準として使わなければならないわけではありません。

相続人全員が合意すれば、どのような基準を用いても問題ありません。

不動産の価値をどのように評価するかは、相続人全員が納得する方法であれば、自由に選ぶことができるのです。

1-2.不動産の公的指標

不動産(土地)価格についての公的指標は以下の通りです。

  • 地価公示価格

毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示するものです。

  • 都道府県地価調査価格

毎年7月1日時点における標準地の正常な価格を9月に公示するものです。

  • 相続税評価額

相続税評価額は、相続財産(不動産)に課税するために、相続税路線価などを基に算出される評価額です。時価の80%とされています。

  • 固定資産税評価額

固定資産税評価額は、土地や建物などの固定資産に対して課税される税金の基準となる価値です。時価の70%とされています。

  • 取引価格

国土交通省が不動産の取引当事者を対象に実施しているアンケート調査に基づいて公表されている情報です。

遺産分割においては、不動産の評価方法は自由に選択できます。

仮に、相続人全員が合意すれば、時価の70%とされる固定資産税評価額を不動産価格として決めることができるのです。

2.遺産分割では時価評価が原則

不動産の「時価」とは、市場でその不動産が現時点で取引されると仮定した場合の価格を指します。「今売ったら、いくらで売れるか」と言い換えることもできます。

実際に売りに出せば「時価」は分かるのですが、売りに出せないから「時価評価」が必要になります。

遺産分割調停や審判においては、不動産の評価額は「時価」が基準とされます。

2-1. 時価を基準とすべき理由

遺産分割において不動産の「時価」を基準とすべき理由は、公平性と現実性を兼ね備えた評価方法であり、相続人間のトラブルを防ぎ、スムーズな分割を実現するために適しているからです。

  • 市場価格に基づく現実的な評価

時価は、その不動産が現在の市場でどの程度の金額で取引されるかを反映しています。
相続人が「不動産を適正に評価している」と感じやすく、現実的で納得しやすい評価方法と言えます。

  • 相続人間での公平性を確保できる

時価を使うことで、不動産を取得する相続人と、現金など他の資産を取得する相続人の間で不公平が生じにくくなります。
固定資産税評価額や相続税路線価に基づく評価方法だと、実際の価値とかい離が大きい場合も多く、これが後々不満を招く原因となり得ます。

  • 他の資産と整合性が取れる

遺産分割において、不動産以外の資産、例えば株式や預貯金などは時価ベースで評価されることが一般的です。
不動産も他の資産と同様に時価で評価することで、資産全体の評価方法に一貫性が生まれます。

  • 税務対策としてもメリットがある

売却時の譲渡所得税を考慮する際に、時価を基にした適正な評価が役立ちます。
将来的に売却を予定している場合、時価評価によって得られる利益を把握し、適切な税務対策を事前に検討することが可能です。

以上のように、「時価」は、現実的な市場価値を反映し、公平性を確保できるため、相続人全員の納得を得やすく、トラブル回避にも大きく貢献してくれます。

そのため、遺産分割では、不動産の評価方法として「時価」を基準とすべきなのです。

2-2. 時価を把握する必要がある場合

  • お金で調整する(代償金を支払う)場合

遺産分割において時価評価が必要な場合は、お金で調整する(代償金を支払う)場合です。

相続人の一人が不動産を相続し、他の相続人には現金で補償するような場合です。

この場合、不動産を時価で評価しないと、代償金の額が実際の価値とズレて不公平が生じる可能性があります。

時価を基に評価することで、全相続人が適正な分配を受け、公平な調整ができるため、トラブルを防ぐことができます。

上記の図は、自宅の時価が3,000万円の場合で、支払う代償金は1,000万円です。

仮に、自宅の時価が5,000万円であったならば、支払う代償金は2,000万円になります。

預貯金1,000万円 + もらった2,000万円 = 3,000万円(相続人A)

自 宅5,000万円 - 支払った2,000万円 = 3,000万円(相続人B)

このように、不動産の価格がいくらかによって、支払う代償金も大きく変わってきます。

相続人全員の納得を得やすく、トラブルを防ぐためにも、時価をいくらと評価するのかが重要になってきます。

  • 不動産が複数ある場合

不動産が複数ある場合にも、公平な遺産分割をするためには、お金で調整することになります。

お金で調整することができれば、「不公平だ!」「わたしもアパートのほうが欲しい!」という不満の声もなくなり、スムーズに遺産分割を進めることができます。

2-3. 時価を把握する必要がない場合

  • 遺言書がある場合

亡くなった方が遺言で、どの相続人にどの財産を相続させるか指定している場合には、原則として、遺言の内容に基づいて遺産分割されることになります。

たとえ不公平感が残ったとしても、遺言書の内容は亡くなった方の遺志なので、遺言通りに遺産を分けることになり、時価を把握する必要はないことになります。

  • 不動産を売却して換金する場合

不動産を売却してお金で分けることを前提とする場合には、実際の売却金額を相続人で分ければ良いだけなので、時価を把握する必要はありません。

  • 不動産全体を共有名義で相続する場合

不動産全体を共有名義で相続する場合には、公平に共有持分を持つことになるだけなので、時価を把握する必要はありません。

なお、共有名義での相続は、後々トラブルを生じやすいため、お勧めはできません。

  • 相続人全員が合意している場合

相続人全員が、不動産の価値に関して特に争いがなく、合意した評価方法(例えば、時価の70%とされる固定資産税評価額)で納得している場合には、あえて時価を把握する必要はありません。

3.不動産の評価方法の選び方

遺産分割において、不動産の評価方法に法的な決まりはありません。

相続人同士の協議や合意によって評価方法を自由に選択できます。

不動産の評価方法を選ぶ際には、家族の状況や相続人同士の関係性、さらに対象不動産の特性など、多くの要素が影響します。

この過程で重要なのは、評価方法を選ぶうえでの基本的な方針を明確にすることです。

3-1. 不動産の評価方法

不動産の評価方法としては、いろいろな方法が考えられますが、ここでは、以下の2つを紹介します。

  • 公的指標をそのまま使う方法
  • 時価評価3つの方法

それぞれの評価方法について確認し、どの評価方法を選ぶべきかポイントを解説します。

3-1-1. 公的指標をそのまま使う方法

種類監督官庁評価時点公表時期時価との関係
地価公示価格国土交通省毎年1月1日毎年3月下旬時価
都道府県地価調査価格都道府県毎年7月1日毎年9月下旬時価
相続税評価額 (路線価)国税庁毎年1月1日毎年7月1日時価の80%
固定資産税評価額市町村毎年1月1日毎年4~6月時価の70%
取引価格国土交通省時価

評価手続きの簡便さやスピードを重視したい場合には、公的指標をそのまま使う方法が適しています。

最も簡単なのは、固定資産税評価額をそのまま使う方法です。

毎年4~6月頃に市町村から送られてくる「固定資産税納税通知書・課税明細書」に記載されている金額をそのまま使うだけです。

相続人全員が「不動産の価値は固定資産税評価額にしよう」と合意できれば、その金額を基に調整するお金(代償金)を計算することになります。

不動産の価値がそれほど大きくない場合に適した方法と言えるでしょう。

3-1-2. 時価評価3つの方法

ここでは、時価評価の方法としては、以下の3つを紹介します。

  • 公的指標を用いた時価評価の方法

費用をかけたくない、不動産会社に事情を知られたくない場合など、公的指標を用いて自分で大まかな時価を算出する方法です。

具体的な方法は、以下の関連記事「自分でできる不動産の評価!調べ方と計算方法を不動産鑑定士が解説」をご覧ください。

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  • 不動産会社の無料査定

費用が発生しないため気軽に依頼でき、不動産の大まかな時価を知ることができます。

不動産会社によって金額にバラツキが出るので、2~3社程度に依頼すると良いでしょう。

しかし、次のようなデメリットがあるので、トラブルにならないように注意が必要です。

評価の信頼性に欠ける
簡易な査定であるため、細かな要因を考慮しない場合があり、信頼性が高い評価を求める場合には、不十分な場合があります。

営業目的
不動産の売却を促すための営業活動の一環であるため、しつこい営業が入ることがあります。

  • 不動産鑑定評価

不動産鑑定評価では、国家資格者である不動産鑑定士が「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき、不動産の価値を公正かつ透明に評価して、不動産鑑定評価書を作成・発行します。

不動産鑑定士は、不動産に関する法規制や経済状況、土地や建物の特徴、地域の市場動向など、多岐にわたる要素を総合的に分析し、公正な評価を行います。

そのため、最も信頼性の高い時価と言えるでしょう。

ただし、鑑定費用の相場は30万円~なので、費用対効果をよく検討する必要があります。

関連記事

不動産鑑定とは?査定との違い・必要性が高い2つの場面を詳しく解説

まとめ

 メリットデメリット
公的指標をそのまま使う費用なし ・最も簡単時価とのかい離が大きい
公的指標を時価水準に修正費用なし ・簡単時価とのかい離の可能性
不動産会社の無料査定費用なし時価の信頼性に欠ける
しつこく営業される恐れ
不動産鑑定評価最も信頼性が高い費用がかかる

3-2. 評価方法の選び方

一般の方にとっては、相続や遺産分割、不動産などは、非常に難しく馴染みのない領域になるので、どうしていいかわからないという方も多いのではないでしょうか。

そんなときには、専門家に相談するのがベストです。

しかし、費用の問題も無視できません。

そこで、費用を抑えて、不動産の評価方法をどうやって決めればよいのかを紹介します。

ここでは、相続税の申告が「必要な場合」と「必要ない場合」に分けて解説します。

相続税の申告が必要か否かは「国税庁 相続税の申告要否判定コーナー」で確認できます。

相続税の申告が必要な場合相続税の申告が必要ない場合
3-2-1. 賢く税理士を活用する」へ3-2-2. 当事者のみで協議する」へ

3-2-1. 賢く税理士を活用する

評価方法に法的な決まりがないからこそ、専門家のアドバイスを受けることがベストです。

しかし、費用がかかるのは困りものです。

そこで、「相続税申告」の必要がある場合には、相続税申告費用の範囲内で「税理士」にアドバイスを求めることをお勧めします。

どうせ相続税の申告費用がかかるのなら、その範囲内で、不動産の評価方法についても依頼した税理士を活用できれば儲けものです。

  • 不動産の評価方法のアドバイス

不動産に強い税理士であれば、不動産の評価方法についてアドバイスをしてくれます。

  • 相続トラブルへの対応力

相続専門の税理士であれば、相続トラブルに慣れているので、適切なアドバイスが期待できます。

  • 節税を考慮した遺産分割のアドバイス

遺産分割の方法について、相続税の節税の観点からアドバイスをしてくれます。
税理士が関与していない場合、相続税を考慮していない遺産分割になりやすく、余分な相続税が発生してしまうことが多いので注意が必要です。

  • 相続税評価額の算出

相続税申告業務の過程で、公的指標の1つである「相続税評価額」を算出してくれます。

  • 譲渡所得税に関するアドバイス

不動産売却時の譲渡所得税の負担を考慮した遺産分割の方法をアドバイスしてくれます。
譲渡所得税の負担を考慮していない場合、後々トラブルになるケースがあります。

  • 専門家ネットワークの紹介

不動産鑑定士や弁護士とのネットワークもあり、必要な時に紹介してくれます。
不動産の評価方法について意見の対立が予想される場合には、相続専門、不動産に強い税理士を選ぶことをお勧めします。

3-2-2. 当事者のみで協議する

「相続税申告」の必要がない場合には、費用をかけずに専門家を活用することは難しいので、当事者のみで協議することになります。

まず、相続人同士のコミュニケーションを大切にすることをお勧めします。

遺産分割は感情的な問題が絡みやすいため、早い段階で不動産評価や分割方法について話し合い、トラブルを最小限に抑える努力が必要になることも多いでしょう。

不動産の評価方法については、以下の流れで考えると良いでしょう。

  • 相続人全員で合意できるのであれば、簡便性を優先して、公的指標(固定資産税評価額)をそのまま使うのも選択肢の一つ
  • 相続トラブルを避けるためには、公平性・納得感が必要なため、時価評価を使う
  • 時価評価3つの方法のなかで、費用のかからない「自分で計算する方法」「不動産会社の無料査定」を検討する。
    2つの方法を併用する、複数の不動産会社を活用すると、より納得感が得られやすいでしょう。
  • 費用のかかる「不動産鑑定評価」は最後の手段
    不動産の価値が大きい場合、不動産の数が多い場合、特殊な不動産の場合などには、費用対効果を考慮して、不動産鑑定評価を活用すべき場合も多いでしょう。
    一般的な戸建住宅であれば、よほどの事情がなければ、不動産鑑定評価を活用する必要はないでしょう。

4.意見対立がある場合の遺産分割の流れ

意見の対立がある場合の遺産分割は、一般的には以下のような流れになります。

① 遺産分割協議

② 遺産分割調停

③ 遺産分割審判

弁護士に依頼するタイミングは、ケースバイケースです

遺産分割調停になったら依頼すると考えている方も多いのですが、決してそんなことはありません。

当事者だけの協議(話し合い)ではうまくいかないことも多く、協議(話し合い)の代理人として弁護士に依頼することも多いでしょう。

激しい意見対立がある、今後予想される場合は、早期に専門家へ相談し、家庭裁判所での調停や審判を見据えて準備を進めることをお勧めします。

4-1. 不動産鑑定評価を活用すべき場合

不動産鑑定評価には、決して安くない費用(最低でも鑑定費用相場30万円~)がかかります。

感情的な対立が激しい場合には、費用対効果を全く顧みない決定をされる方もいらっしゃいます。

まずは、冷静に費用対効果を検討することをお勧めします。

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不動産鑑定とは?査定との違い・必要性が高い2つの場面を詳しく解説

個別事情や評価する不動産の状況によっては、不動産鑑定評価を活用することで、有利に遺産分割を進められる場合もあります。

とくに、不動産の価値が大きい場合、不動産の数が多い場合、特殊な不動産の場合などには、不動産鑑定評価の活用を検討することをお勧めします。

不動産鑑定評価を依頼するタイミングも、ケースバイケースです。

不動産鑑定評価を活用すべきかどうか、どのタイミングで依頼するかは、個別事情などによるところが大きいので、一概には申し上げられません。

弁護士や不動産鑑定士と相談して検討すると良いでしょう。

4-2. 遺産分割協議

意見対立がある場合の遺産分割協議では、当事者だけで解決しようとすることでかえってトラブルが拡大するケースが少なくありません。

相続人同士で意見が対立し始めると、介護問題や遠い過去の出来事なども絡めて、感情的な対立が生じ、話し合いが長引きやすくなります。

また、不動産や税務の知識が不十分なままで協議を進めると、評価額の不一致や誤った分割方法によって思わぬ税金負担が生じる場合もあり、不公平感が生まれ、さらに混乱を招くことがあります。

こうしたトラブルを避けるためには、費用がかかっても早い段階で弁護士や税理士、不動産鑑定士といった専門家に依頼することが重要です。

専門家の助言により、客観的かつ法的に正当な評価や分割案が得られるため、相続人全員が納得しやすくなり、協議をスムーズに進められます。

結果として、時間と労力を節約し、トラブルの長期化を防ぐことができます。

4-3. 遺産分割調停・審判

遺産分割調停は、相続人間で遺産分割の合意が得られない場合に、家庭裁判所が間に入り、調停委員が相続人の意見を調整して解決を図る手続きです。

調停では相続人の主張を公平に聞き、合意形成を目指します。

合意が成立すれば調停調書が作成され、法的拘束力が生まれますが、調停でも解決しない場合は審判へと進み、裁判官が最終判断を下します。

遺産分割調停・審判の流れは以下の通りです。

① 評価方法の意見対立

不動産の評価方法として「固定資産税評価額」「路線価」「時価」などがあり、それぞれ異なる評価額が出るため、相続人の主張が分かれやすくなります。
例えば、不動産の価値を低く見積もりたい相続人は固定資産税評価額を希望し、一方で時価評価を主張する相続人がいる場合、意見対立が発生します。

② 調停委員による調整

調停委員は中立的な立場で相続人それぞれの意見や主張を聞き、対話を通じて意見の調整を図ります。
相続人の感情的な対立を和らげつつ、不動産の評価や分割方法についての公平な合意を目指し、法律や公平性に基づいた提案を行います。

③ 不動産鑑定評価の依頼

調停委員による調整でも合意に至らない場合には、裁判所が中立的な立場で不動産鑑定士を選任し、不動産鑑定評価が行われることがあります。
この手続きにより、不動産の客観的な市場価値(時価)が明確化され、相続人全員が納得しやすい公平な評価が提示されます。
裁判所選任の不動産鑑定士による不動産鑑定評価書は、裁判手続きにおいて重要な証拠資料となり、最終的な調停の合意や審判での分割判断に影響を与えます。

④ 調停不成立の場合は審判へ移行

調停でも意見が一致しない場合、審判に移行し、裁判官が客観的に妥当とされる評価方法に基づき、不動産の評価額を決定します。
審判では、調停で得られた資料や鑑定評価を基に、公平な遺産分割が行われます。

⑤ 審判の決定

最終的に裁判官が、鑑定評価や相続人の主張を考慮し、公正な分割方法と評価額を決定します。
この審判結果には法的拘束力があるため、相続人はこれに従って遺産を分割します。

5.まとめ

  • 遺産分割における不動産の評価基準に法的な決まりはない
  • 相続人全員の合意で評価方法を自由に選択できる
  • 相続トラブルを防ぎ、スムーズな分割を実現するためには「時価」を基準とすべき
  • 時価評価が必要な場合は、お金で調整する(代償金を支払う)場合
  • 最も簡単なのは固定資産税評価額をそのまま使う方法
  • 相続税申告が必要な場合は、相続専門の税理士から評価方法のアドバイスをもらう
  • 相続税の申告が必要ない場合は、「自分でできる公的指標を用いた時価評価の方法」と「不動産会社の無料査定」を活用する
  • 不動産鑑定評価を活用すべき場合は、不動産の価値が大きい場合や特殊な不動産の場合
  • 不動産鑑定評価を活用することで、有利に遺産分割を進められる場合もある
  • 意見対立がある場合の遺産分割の流れは、協議、調停、審判の順
  • 激しい意見対立が予想される場合は、早期に専門家へ相談することが成功のカギ

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