「えっ、そんなにするの?!・・・」
不動産鑑定の費用相場は、一般的に最低でも20万円~とされています。
不動産会社の「無料査定」という広告をよく見かけるので、余計に高く感じるかもしれません。
じつは、個人の方にとっては、ホントに不動産鑑定が必要なケースはそれほど多くありません。
ホントに必要なケースを見極めることで、ムダな費用をかけずに済む可能性があります。
ここでは、不動産鑑定のホントの費用相場、どんな場合に不動産鑑定が必要なのか、費用を安く抑えるコツを解説します。
この記事を読み終えていただければ、以下について詳しく知ることができます。
・ 不動産鑑定のホントの費用相場
・ 不動産鑑定が必要な2ケース
・ 無料の代替手段
・ 不動産鑑定の費用を安く抑える方法
執筆者:古林国博
古林 不動産鑑定士・税理士・公認会計士事務所 代表
不動産オーナー様が抱える「節税・相続・不動産経営」などのお悩みをまるごと解決へと導くお手伝いを行っています。
飛込み営業で鍛えられた「親しみやすさ」と不動産と相続に特化した「高い専門性」でサポートいたします。
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1. 不動産鑑定評価の料金相場
私たちの事務所では、依頼目的が「節税」や「紛争解決」の場合には、費用対効果を考慮しつつ、不動産鑑定を活用することをお勧めしています。
しかし、これらの場合でも、費用対効果に見合わない場合には、「費用をかけてまで不動産鑑定を依頼しなくても大丈夫ですよ」とご案内しています。
1-1. 一般的な不動産鑑定評価の料金相場
不動産鑑定評価の費用は、一般的に20~50万円くらいとされていることが多いようです。
不動産の種類(土地のみ、土地と建物、マンションなど)や、その評価額によって、料金が変動する料金表を作成している事務所も多く見受けられます。
また、最低料金:「土地のみ:20万円~」のような表記にしている事務所も多いようです。
不動産の種類 | 費用相場 |
土地のみ | 20万円~ |
土地と建物(戸建住宅など) | 25万円~ |
マンション | 30万円~ |
以下は、「公共事業に係る不動産鑑定報酬基準」です。
民間の不動産鑑定報酬はもう少し高いことが多いと思いますが、ある程度、参考になると思います。
各事務所は独自のルールで料金設定しています。
高品質を売りにするところもあれば、低価格路線のところもあって、事務所によって様々です。
それぞれ比較検討して、お客様のご要望にお応えできる事務所を探す必要があります。
1-2. 不動産鑑定の必要性が高い2ケースの料金相場
私たちの事務所では、不動産鑑定を依頼すべきなのは、「節税」と「紛争解決」の2つのケースと考えています。
これらのケースでは、費用をかけてでも不動産鑑定を依頼したほうが、お客様にとってお得なことが多いと考えられるからです。
これらのケースの料金相場は、一般的に言われている料金の1.2~2倍くらい(25~100万円)と考えたほうが良いでしょう。
一般的な不動産鑑定評価の場合には、不動産鑑定士としては不動産鑑定評価書を作成、提出して業務完了となります。
しかし、「節税」と「紛争解決」の場合には、提出して業務完了とはならないため、時間や労力は何倍もかかります。
お客様の「節税」や「紛争解決」という目的が達成されるためには、税務署や裁判所を納得させるだけの説得力を持った内容まで、不動産鑑定評価書を作り込む必要があります。
それだけ時間もコストもかかるため、費用が高くなるのは当然といえば当然なのです。
参考までに、私たちの事務所の料金表を紹介します。
税務や不動産のアドバイスなどの強みを活かして、高品質を保つ料金設定となっています。
古林 不動産鑑定士・税理士・公認会計士事務所「不動産鑑定(料金表)」のご案内
1-3. 簡易版の不動産鑑定
一般的には、「費用を抑えた簡易的な不動産鑑定評価」という意味合いで使われていると思います。
不動産鑑定士が行う業務には、国土交通省のガイドラインなどの厳格なルールが定められています。
どこまで簡易的にするかにもよりますが、不動産鑑定評価と比べて簡易的であるとはいっても、厳格なルールに基づいて必要な手順を経る必要があります。
そのため、不動産鑑定士の業務量はそれほど抑えられないため、思いのほか費用も安くなりません。
概ね正式な不動産鑑定評価の70~80%の費用がかかることが多いでしょう。
また、ご依頼内容によっては発行できないケースもあるので、注意が必要です。
1-4. 不動産鑑定の費用が高い理由
「不動産の鑑定評価に関する法律」は、不動産の価値を公正かつ透明に評価するための詳細なルールを設定しており、不動産鑑定士はこれに従い慎重に作業を進めなければなりません。
不動産鑑定評価は、安易に行えるものではなく、高い専門性と責任が伴う業務なのです。
不動産鑑定評価は、国家資格者である不動産鑑定士のみが行える独占業務です。
具体的には、不動産鑑定士が鑑定評価額を表示した不動産鑑定評価書を作成・発行します。
不動産鑑定評価書は、概ね20~30ページ程度のことが多いのですが、多い場合には100ページを超えることもあります。
不動産鑑定士は、不動産に関する法規制や経済状況、土地や建物の特徴、地域の市場動向など、多岐にわたる要素を総合的に分析し、公正な評価を行います。
この過程では、データ収集や現地調査、関連資料の精査など、多くの時間と労力がかかる作業が求められるので、どうしても費用が高くなってしまうのです。
不動産鑑定のような労働集約型の業務では、コスト削減などの企業努力には限界があります。
鑑定費用を抑え過ぎると、不動産鑑定の質を下げざるを得ない構造となっているのです。
1-5. 不動産会社の査定が無料の理由
「不動産の無料査定は当社まで!」という不動産会社の広告をよく見かます。
不動産会社の査定と不動産鑑定評価は、どちらも不動産の価値を示すものですが、その目的は異なります。
不動産会社が無料査定を行う理由は、顧客を引き付けるためのマーケティング戦略の一環だからです。
無料査定を通じて売却希望者と接点を持ち、信頼関係を築きながら契約や売買の依頼につなげることを目指しています。
不動産会社の収益は、売買が成立した際に得られる仲介手数料が中心です。
この手数料は売買成立時にのみ受け取れるため、契約に結びつける努力が必要です。
査定書の作成には手間やコストがあまりかからず、法的責任も伴わないため、無料提供でも十分に成り立つビジネスモデルとなっています。
2. 不動産鑑定を依頼すべき2つのケース
私たちの事務所では、大きく分けて、「節税」と「紛争解決」の2つのケースで不動産鑑定を依頼すべきと考えています。
これらのケースでは、費用をかけてでも不動産鑑定を依頼したほうが、お客様にとってお得なことが多いと考えられるからです。
「節税」と「紛争解決」の場合は費用対効果で考える
「節税」と「紛争解決」を目的とする場合であっても、事前に費用対効果に見合わないと判断される場合があります。
このような場合には、私たちの事務所では、お客様に「費用をかけて不動産鑑定評価のご依頼を頂くのはもったいないですよ、代替の方法で十分ですよ」とご案内することもあります。
30万円しか節税できないのに、不動産鑑定に50万円の費用をかけても意味がありません。
紛争解決の場合にも、交渉の戦略上、最初から費用をかけて不動産鑑定を依頼しないほうが良い場合もあります。
上記でも説明しましたが、「節税」と「紛争解決」の場合には、一般的な不動産鑑定よりも多くの費用がかかります。
費用に見合った効果を見極めて、不動産鑑定を依頼すべきでしょう。
「節税」や「紛争解決」の詳細については、以下の関連記事「不動産鑑定とは?査定との違い・必要性が高い2つの場面を詳しく解説」をご覧ください。
関連記事
不動産鑑定とは?査定との違い・必要性が高い2つの場面を詳しく解説
3. 不動産鑑定で費用を安く抑える方法
費用を安く抑えるためには、次の順番で考えると良いでしょう。
- まずは、不動産鑑定がホントに必要か検討する。
- 不動産鑑定が必ずしも必要ないのなら、無料の代替手段で対応する。
- 不動産鑑定が必ず必要なら、低価格路線の不動産鑑定士を探す。
- 簡易版でも事足りるなら、簡易版の不動産鑑定を依頼する。
なお、「節税」や「紛争解決」の場合には、目的達成のために質の高い不動産鑑定評価書が必要となるケースも多いため、費用対効果を検討する必要がある点に注意が必要です。
担当の税理士さんや弁護士さんとよく検討されることをお勧めします。
3-1. 費用を安く抑える判定フローチャート
個別事情などによって、諸々の判断は異なってきます。
フローチャートは、あくまで一般的な判断基準とお考えください。
不動産鑑定評価書が金融機関等の内部資料として扱われる場合には、提出することに意義がある場合もあります。
不動産鑑定評価書の内容があまり重要視されないのであれば、コスト重視で依頼する不動産鑑定士を選定しても問題ないでしょう。
3-2. 費用を安く抑える不動産鑑定士の探し方
不動産鑑定士を探す主な方法は、以下の通りです。
費用を安く抑えるためには、インターネット検索が最も効果的でしょう。
- インターネット検索
不動産鑑定士の仕事は、国や自治体などの公的機関からの仕事が大半を占めています。
そのため、不動産鑑定士は、名刺代わりのホームページだけしか持っていないことも多く、ホームページすら持っていない事務所もたくさんあります。
「地域名+不動産鑑定士」と検索して、力の入ったホームページが見つかれば、個人向けの仕事も積極的に取り組んでいる可能性があり、リーズナブルな料金設定の可能性もあるでしょう。
- 不動産鑑定士協会の活用
地域の不動産鑑定士協会のホームページを利用すると、登録された不動産鑑定士のリストが見つかります。
ただし、リストの中から費用の安い不動産鑑定士を選ぶ判断基準がない点が難点と言えるでしょう。
- 不動産会社や銀行に紹介を依頼
不動産の取引を扱う不動産会社や金融機関は、提携している不動産鑑定士がいる場合が多いです。
信頼のおける不動産鑑定士を紹介してもらえるため、安心して依頼できます。
しかし、費用を安く抑えられるかは不透明です。
3-3. 費用を安く抑える不動産鑑定士の選び方
費用を安く抑えるためには、地元の不動産鑑定士を選ぶことをお勧めします。
- 地元の不動産鑑定士を選ぶ
地元の不動産鑑定士は、地元の不動産鑑定士協会の優遇を受けられます。
遠方からの移動や追加の調査が不要なため、交通費や時間コストを抑えられます。
したがって、地元の不動産鑑定士は、安く不動産鑑定を提供できる場合が多いでしょう。
- 独立して間もない不動産鑑定士を選ぶ
独立して間もない不動産鑑定士は、国や自治体などの公的機関からの仕事に参入できていない場合もあり、リーズナブルな料金設定の可能性もあるでしょう。
- 一人事務所の不動産鑑定士を選ぶ
一人事務所の不動産鑑定士は、事務所経費を抑えることができるため、安く不動産鑑定を提供してくれる場合もあります。
- 低価格路線の不動産鑑定士を選ぶ
薄利多売の低価格路線を採用する不動産鑑定士は、低価格で多くの案件をこなすことで収益を上げる戦略を取っているので、安く不動産鑑定を提供してくれるでしょう。
- 相見積もりを取る
相見積もりを取ることで、各不動産鑑定士の料金やサービス内容を比較でき、最も割安な不動産鑑定士を選ぶことができます。
3-4. 不動産鑑定士に依頼する流れ
不動産鑑定士に依頼する際の手順は、以下の通りです。
①【目的の明確化】
まず、不動産鑑定を依頼する目的をはっきりさせましょう。
依頼目的が「節税」や「紛争解決」であれば、費用を安く抑えるのは得策とは言えません。
その他の依頼目的であれば、費用を安く抑えても問題ない場合が多いでしょう。
依頼目的によって、不動産鑑定士の選び方も異なってきます。
また、売却のための価格査定、銀行融資の担保評価など、具体的な目的によって鑑定の範囲や内容が変わるため、不動産鑑定士に正確に伝えるための準備が必要です。
②【問い合わせ・見積もり依頼】
選定した不動産鑑定士に連絡し、鑑定依頼の内容を伝え、見積もりを依頼します。
依頼内容を明確にするために、物件の詳細や不動産鑑定の目的、希望する納期などを伝えます。
不動産鑑定士からは、必要な書類や手続きについての案内があるでしょう。
③【正式な依頼・契約】
見積もり内容に納得したら、正式に不動産鑑定を依頼し、契約を結びます。
この際、依頼内容、鑑定の範囲、納期、料金の支払い方法などを契約書に明記します。
契約内容をしっかり確認し、疑問点があれば事前に相談しましょう。
④【資料の提供】
不動産鑑定を行うためには、物件に関する資料が必要です。
土地や建物の登記事項証明書、固定資産税評価証明書、過去の取引資料など、必要な書類を用意して提出します。
不動産鑑定士から特定の資料を依頼される場合もあるため、指示に従って準備します。
⑤【現地調査・不動産鑑定評価】
不動産鑑定士が物件の現地調査を行い、市場動向や法規制なども考慮しながら不動産鑑定評価を行います。
鑑定期間は物件の種類や鑑定の目的によって異なりますが、通常は3~4数週間程度はかかることが多いでしょう。
⑥【不動産鑑定評価書の受け取り】
不動産鑑定が終了すると、不動産鑑定評価書が発行されます。
この評価書には、評価額の根拠や詳細な調査結果が記載されています。
内容に不明点や不備がないか確認し、必要に応じて不動産鑑定士に質問や確認を行います。
⑦【支払い】
不動産鑑定が完了し、不動産鑑定評価書を受け取ったら、契約時に取り決めた方法で鑑定費用を支払います。。
以上が、不動産鑑定士に依頼する際の流れです。
依頼の際には、不動産鑑定士とコミュニケーションを密に取り、目的に合った不動産鑑定評価を得ることが重要です。
4. 無料の代替手段
不動産鑑定の代替手段としては、次の2つが考えられます。
- 不動産会社の無料査定を活用する
- 公的情報から自分で調べる
4-1. 不動産会社の無料査定
費用が発生しないため気軽に依頼でき、不動産の大まかな価値を知ることができます。
不動産会社によって金額にバラツキが出るので、2~3社程度に依頼すると良いでしょう。
しかし、次のようなデメリットがあるので、トラブルにならないように注意が必要です。
【無料査定のデメリット】
- 評価の信頼性に欠ける
簡易な査定であるため、細かな要因を考慮しない場合があり、信頼性が高い評価を求める場合には、不十分な場合があります。 - 営業目的
不動産の売却を促すための営業活動の一環であるため、しつこい営業が入ることがあります。
4-2. 公的情報から自分で調べる
- 「地価公示」
- 「都道府県地価調査」
- 「相続税路線価」
- 「固定資産税路線価」
これらは、各監督官庁から委嘱を受けた不動産鑑定士が不動産鑑定評価を行って算出した鑑定評価額を基に決定されています。
これらの公的情報から、自分で概算価格を算定することができます。
具体的な方法は、以下の関連記事「自分でできる不動産の評価!調べ方と計算方法を不動産鑑定士が解説」をご覧ください。
ただし、地域によっては、情報が不十分で価格算定が難しい場合や、実勢価格と乖離してしまう場合があるので、注意が必要です。
関連記事
自分でできる不動産の評価!調べ方と計算方法を不動産鑑定士が解説
4. まとめ
個人のお客様にとって、不動産鑑定が必要になるのは、「節税」と「紛争解決」のケースが多いです。
「節税」「紛争解決」以外の一般的なケース
- 費用相場は、20~50万円(不動産の種類や評価額による)
- まずは、代替手段で対応できるか検討しましょう。
- 無料の代替手段は2つ:①不動産会社の無料査定、②公的情報から自分で調べる
- 不動産鑑定を依頼するなら、費用を安く抑えるためには、地元の不動産鑑定士を選ぶと良いでしょう。
「節税」「紛争解決」のケース
- 費用相場は、25~100万円(一般的に言われている相場の1.2~2倍くらい)
- 「節税」「紛争解決」という目的を達成するためには、税務署や裁判所を説得するだけの高品質な不動産鑑定評価書が必要です。
- 「節税効果」や「紛争解決の結果」と鑑定費用との費用対効果を見極めましょう。
- 不動産鑑定士を選ぶにあたっては、「節税」「紛争解決」という目的を達成できるように、専門性や実績で選ぶと良いでしょう。
参考までに、私たちの事務所の料金表を紹介します。
税務や不動産のアドバイスなどの強みを活かして、高品質を保つ料金設定としています。
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